中国あるある

中国での20年間は、驚きの毎日でした

1cmでも前に進みたい?

中国の交通渋滞は日常茶飯事です。

急激に車が増えてきたことが主原因です。

それに対し、道路もすごい勢いで整備が進んでいます。日本ほど立ち退きにお金と労力がかからないこともあり、車線数のたくさんある広い道路がたくさんあります。歩道も広く、2輪車専用道路もほとんどの道路に設置されています。

下の写真のように、片側3車線で2輪専用道路1本、さらにグリーンベルトも3本用意されている道路なんてざらにあります。それでも、こんな無茶苦茶な渋滞が起きます。

こちらの写真は警官が交差点の真ん中で交通整理をしています。しかし、それでも一向に渋滞は解消されません。警官が交通整理をすると、かえって渋滞がひどくなるという人もいるほどです。

交差点に車が無理やり突っ込んで埋め尽くされます。こうなると全く動けなくなります。交差点を起点に、そこにつながる道路に大渋滞が発生します。

私は、中国の渋滞の原因は、単に車が多いからだけではないと思っています。

一番大きな原因は、二つあります。どちらも中国人ドライバーの問題です。

① 先のことを考えない

② 1cmでも前に進みたい

この二つの原因が解消されない限り、どんなに道路を整備しても、ある程度の車が走っている限り、中国では渋滞が解消されないと思うのです。

① 先のことを考えない 

こういうことです。日本人ならふつうこのような判断をするはずです⇒<交差点で青信号だが、その向こうで車が詰まっている、このまま進んだら自分の車が交差点の中に取り残されてしまい、赤信号になるとえらいことになる、だから前が空くまで青信号でも進まない> 1手先のことを考えると、答えは簡単に出るし、日本人なら習慣的にそうするものです。

しかしこれをやらないのが中国人なのです。交差点の先が詰まっていようがいまいが、交差点に取り残される可能性があろうがなかろうが、青信号なのだから前進する権利を遂行してしまいます。それを全員がやったら、交差点の中に大量の車が取り残されたまま信号が変わり、横方向の車は青信号になっても交差点に入ることさえできなくなります。

② 1cmでも前に進みたい

①の原因の根底にあるのが②です。私が感じるに、この感覚がこの渋滞の根っこにある問題のような気がします。

信号が青ならば、前進する権利が与えられたわけで、その時前にスペースがあれば、ひたすら前に進むのです。その先何が起きようが、とにかく少しでも前に進むというミッションが最優先されます。

よく私が助手席に乗っているとき、運転している中国人の友達に冗談で尋ねるのが、「中国の車にはバックギアが付いてないのか?」です。

とにかく、写真を見てもらうとわかるように、車と車の間隔が全くないような状態にまで前を詰めるので、Uターンしたり、横向きの車を1台でも通すスペースを開けてやることができません。

「譲っていたら、ほかの車に割り込まれて、自分は一生前に進めない」という感覚なのかと思います。

一つ先を読んで、ちょっとだけ待てば、こんなことにはならないのに・・・

これは、中国で車に乗っていて、いつも不思議に思うことです。

点滴大好き! すぐに点滴!

中国に住んでいて、病院には極力行きたくないのが本音です。理由はあまり信用できないからです。医師のレベルも日本に比べると低い気がしますし、何より金儲け主義が蔓延しているからです。

その典型が点滴です。

風邪にしろ腹痛にしろ、場合によっては外科に行っても点滴することがあります。

とにかく必ずと言ってもいいほど点滴することになるのです。

病院にはたいてい大きな点滴コーナーがあります。いかに大量の人が、一度に点滴をうけるかが一目瞭然です。目を疑うようなたくさんの点滴用の椅子が並んでいます。

看護婦さんたちは大量の患者さんたちを処理するのが間に合わないのか、見回りしてくることはほとんどありません。放置されて不安になることがよくあります。

中国の傾向として、大型の総合病院が一般的で、そこに大量の患者が訪れるのが日常です。人口が多すぎるのが原因なのでしょうが、人口比で医療関係者や病院の数が足りないのが一番の問題です。

それはおいといて、とにかく、点滴による処置が多すぎるのが気になります。外来で点滴できる種類の薬はそんなに多くはないはずです。せいぜい水分補給か、抗生剤くらいのものです。

上海にある外資系の病院に行ったとき、日本語を勉強しているという看護婦がいたので、いろいろ話を聞きました。彼女は病気になって点滴を指示されたら、ほとんどの場合断るそうです。治療に対してはあまり効果が無いにもかかわらず、病院は点滴を勧めるからです。目的は、手っ取り早く高収入が得られるからということでした。確かに点滴するとしないとでは、病院での支払額が大きく違います。点滴は、看護婦の工数が少ないわりに高収入が得られるのです。コストメリットが非常に高い処置方法です。点滴する場所さえ確保できていれば、その場所の稼働率を上げることで、病院は儲かる仕組みになっています。

それを支えているのが、患者側の誤解です。点滴が病気をなおす一番の近道だと信じている人が多いのです。善意の医師が点滴は必要ないと言っても、患者側から要求することも多いと聞きます。

病院も儲かり、患者も満足、WINWINの関係で、点滴まみれの医療実態が生まれました。

しかし、ここ数年は、患者も賢くなってきました。

善意の医療関係者も声を上げるようになりました。

特にネットでの情報が多く流れるようになり、点滴のやりすぎや弊害が問題視されるようになりました。

ようやく点滴まみれの病院が少なくなってきたようです。

 

しかし、金儲け主義は相変わらずなので、次はどの手で来るのか・・・

 

 

乗っていたタクシーに別の客が

中国のタクシーは値段が安いので、電車代わりによく使います。特に地下鉄があまり普及していなかった頃は、日常の足として便利に使っていました。値段はちょうど日本の電車代と同じくらいです。

まあ中国のタクシーに関してはいろいろ言いたいことが山のようにあるのですが、今日はその中で、相乗りの件について書きたいと思います。

最初の頃は、相乗りタクシーに遭遇したことがしばらくありませんでした。
頻度が少ないからなのか、誰からも聞かされていなかったので、最初にそれに遭遇した時には、さすがにびっくりしました。
最初は普通にタクシーに乗っていました。何の変哲もないごく普通のタクシーでした。目的地に向かって走っている途中、中年の女性が私が乗っているタクシーに対して手を挙げたのです。最初は乗車中の表示が見えないのかなと思いました。しかし、私の乗ったタクシーはその女性の横で停まったのです。そして、前のドアを開けて、助手席に乗り込みました。
あれれ・・・?
何がどうなっているの全くかわかりませんでした。プチパニックに陥っていました。当時は中国語もあまり上手くしゃべれないため、状況を聞くこともできません。運転手の家族か知り合いなのかな?とも思いました。しばらくして、私の目的地に着く前にタクシーが停まって、女性が降りました。そのとき女性は運転手と会話して10元を渡していました。頭の中には「?マーク」がずっと浮かんだま、私は目的地に着き、メーター表示通りの金額を払って、領収書を受取り、タクシーを降りました。
頭の中のモヤモヤは晴れないままです。
翌日会社の中国人に聞いてみたら、「あっ、それ相乗りだよ」と教えてくれました。運転手によるみたいですが、時々あるそうです。

 

次に経験したのは、2~3カ月後でした。
空車のマークがはっきりわかるので、そのタクシーの前で手を上げたら停まってくれました。後ろのドアを開けて乗ったら、助手席におじさんが乗っていました。私が行先を告げると、運転手は黙って発車しました。
助手席のおじさんは運転手の友達なのかなとか思いながらメーターを見るとすでに動いていたのです。あれ~っ?、空車の表示がされているままなのに、メーターは動いているのです。その時初めて知りました。メーターと空車表示は連動していないのです。
今回は私が先に降りるようです。運転手が料金を口頭で言いました。近い距離だったので10元でいいそうです。しかし領収書はくれませんでした。おじさんは乗ったままでした。

タクシードライバーは日頃の勘と経験で料金を推定してそれぞれの客に請求していました。私の経験上は、必ずタクシー運転手が儲かるような値段を請求され、乗客のメリットは少なかったと記憶しています。

さらに領収書は1人の乗客にしか発行できません。
中国でのタクシーの領収書はいろんな面で重要です。日本のように会社で領収書決済する場合は同じなのですが、それ以外に車内に忘れ物をした場合や、運転手が遠回りをした場合にクレームをいれるだとか・・・いろんな場面で領収書があってよかったと思うことがあります。しかし、相乗りの場合は領収書がもらえないことがあります。

また、客の組み合わせによっては多少遠回りすることもあります。その場合も、運転手の勘と経験でそれぞれの客の料金を決めるのです。過去の経験上、この料金に文句を言った客は見たことありません。
しかし、遠回りした場合は時間が無駄に使われることになります。さらに大きいのは、タクシーの中でプライベートな空間を維持できるというのもその料金価値の中に含まれると思うのです。ところがおおらかな中国人はそんな細かいことは気にしません。もちろんどうしても相乗りが気にいらない場合は断ればいいのです。しかし、だいたいが混んでいてタクシーがなかなか拾えない場合に相乗りが発生しやすいので、うまく市場原理をつかったシステムなのかもしれません。

 

そして、なんと「相乗り用のタクシーメーター」が開発されたのです。

異なる乗客が同乗して、異なる場所から、異なる目的地に行く場合でも同じ1台のメーターを使用します。

黒龍江龍運現代輸送有限公司は1500台のタクシーに搭載して実用しているそうです。

以前とは異なり、利用客はメーターを見れば、自分はどこからどこまで乗って料金がいくらか明確に理解できます。

同時に3枚の異なる領収書を発行することもできます。 新しいメーターには、合計と個別両方の価格設定機能があります。 
 新しいメーターを使用すると、最初の乗客だけでなく、2番目と 3番目の乗客にも領収書を発行できるのです。

以前はドライバーの勘と経験で料金は決まっていましたが、このメーターは、非常に正確に料金と距離を計算することができ、領収書や払い戻しも非常に便利です。

新しいメーターは、計算だけではなく、GPS-NAVIを利用して渋滞情報も加味した最短ルート表示、実走経路記録、タクシー会社からのリモート管理など、多くのハイテク機能を備えています。
リアルタイムポジショニングや走行軌跡再生機能により、乗客の遺失物検索、迂回、その他の苦情処理効率が向上したと評判のようです。

相乗り文化を維持継続するために、新しいハイテク機能が実施されるようになったのですね。

すでにDiDiでは相乗りが普通に行われていたし、タクシーで導入されるのは遅すぎた感もあります。

 

しかし、私は、やっぱりタクシーではプライベート空間を大事にしたい派です。
どうも相乗り文化には慣れたくないです。

 

 

美味しい小籠包の鼎泰丰で怒る役人

私は小籠包が大好きです。私が小籠包を初めて食べたのは、出張で上海に行った時です。出張中に休日があったので、当時の駐在員が上海の豫園(日本の浅草のような感じ)に観光に連れて行ってくれました。豫園は庭園が中心なのですが、その周辺にある小さな食べ物屋やお土産物屋さんの方が有名です。

その豫園の中に南翔饅頭店という老舗の小籠包が美味しいからと言われ、一緒に行列に並びました。

待つこと30分以上、ようやく手に入れた小籠包は発泡スチロール(今はボール紙)の簡単な弁当箱のような容器に十数個入ってたしか6元か8元くらいだったと思います。

その時はあまり美味しいという記憶はないのですが、とにかく安くてたくさん食べられて、おなか一杯になったのを覚えています。

ここはレストランも併設しており、値段は多少高いのですが、そちらの方はそんなに並ばなくても食べることができます。

 

しばらくして、次の出張の時に前回と同じ駐在員が連れて行ってくれたのは、上海の水城路、和平広場にある小綺麗なレストランでした。

名前は「鼎泰豐」です。もともと小籠包は中国発祥ですが、台湾で鼎泰豐に進化し、上海に逆上陸したのです。

(和平広場は隣の洛陽広場と一緒に取り壊され、今では別の大きなショッピングモールが建てられています)

鼎泰豐は、椅子もテーブルも綺麗で、なんといっても従業員の教育が行き届いており、態度が素晴らしいのです。日本だと普通なんですが、当時の中国のガサツなレストランと比べると大違いでした。中国でもこういうサービスができるんだと驚いたものでした。

そして出された小籠包、これが以前豫園で食べた南翔小籠包とは全く別物で、繊細で優しく緻密な料理に仕上がっているのです。

まず、皮の厚さが全く違います。ものすごく薄いのです。箸で先っぽをつかんで持ち上げると、下に伸びて、いまにも破れてしまいそうな皮は、しかし破れることなく口の中までしっかり運べます。

そして温度も、丸ごと口の中に放り込んでもなんとかやけどすることなく美味しさを味わえる程度に絶妙にコントロールされていました。味はもちろん絶品です。肉汁がほどよく口の中にほとばしり辛くも無く塩っぱくもない、かといってコクのある繊細な味に仕上がっていました。

あの小籠包がこんなに立派な料理に変身してしまうとは、驚きでした。

 

その翌年に私は上海に赴任しました。駐在員生活のスタートです。

当時は出張者も多く、皆さんをここに連れてきて食事していました。評判が高く、そのうち日本の本社の中でも広まっていき、社長が来たときは、必ずここで小籠包を食べることが恒例になりました。社長の出張時の飛行機はファーストクラスなので、美味しい食事を食べられるはずなのに、上海に来るときだけはその食事を断って、わざわざお腹を空かせておくのです。そして上海到着後一目散に鼎泰豐にやってきて小籠包を食べていました。

 

ある日、会議の場で、会社の某部門の部長(日本人)が中国人の総務部長から指摘をうけていました。

ある中国の役人が怒って、会社に連絡してきたそうです。

その役人は前日の夜、和平広場の鼎泰豐(当時は和平広場にしかありませんでした)で接待を受けたのです。ホストはその日本人部長でした。彼は鼎泰豐でその役人を接待したのでした。サービスは最高だし、値段もけっこう高い方だったので、接待には問題ないレベルだと思っていました。一応一部上場企業でもあるわが社の社長も毎回ここで接待しているくらいの場所ですから。

当時は、企業が役人を接待するのは当たり前でした。その費用も予算の中にしっかり入っていたほどです。接待の仕方によっては、企業運営にも影響があるほどです。

そんな大事な接待だったのですが、役人は怒りが収まらない様子で、「お前の会社は接待で小籠包を食わせるのか!」と騒いでいたそうです。

総務部長の説明では、小籠包は中国人にとってはおやつのようなもの、庶民の主食にもなりえない程度の食べ物であり、大事な接待で提供するなんてとんでもないことだっったのです。

私もそこまでは気が付きませんでした。もしも私が担当の接待だったら、やっぱり鼎泰豐を選んでいた可能性があります。明日は我が身でした。

その後、駐在員たちは肝に銘じて、二度と中国人に対する接待で鼎泰豐を使うことはありませんでした。

 

それから数年すると、鼎泰豐はますます有名になり、上海にたくさんの支店ができました。日本にも東京の一等地に出店し、中国よりもはるかに高い価格で提供したにも関わらず長蛇の列ができたそうです。

上海の一等地の新天地にも鼎泰豊ができ、センスのよいおしゃれな中国人たちも、よく通うようになっていきました。

小籠包の値段もどんどん上がって、和平広場にあった時代の3倍以上の値段になっていますが、いまだに安定した人気を誇っています。

今だったら、役人をここに連れてきても、怒ることはないかもしれません。

しかし、今の中国では、役人を接待することはなくなりました。

某部長の接待は、時代が早すぎてしまったのですね。

 

 

 

 

 

 

 

リビングルームがプールに

10月のある日、翌日はあさイチから会議なので、ちょっと早めにシャワーしてベッドに入って寝ることにしました。

しばらくしたら、リビングの方からエアコンの大きな音がし始めたような気がしました。この時期エアコンは入れてないはずですが、もしかしたらタイマーを間違って設定してたのかもしれません。おかしいな~と思いながらも眠いので、ほっといてそのまま寝てしまいました。

夜中に眠りが浅くなったころ、エアコンの音がまだ聞こえていました。強風に設定したのかもしれません。とにかくこの季節にエアコンを入れる必要はないので、起き出してリビングに行って照明をつけてみました。
すると・・・なんと! 

リビング全体が、池になり始めていたのです。

靴やスリッパがプカプカ浮いて漂っていました。カーペットもひらひらとエイのように泳いでいました。

足には生ぬるいお湯の感触が・・・

最初は何が起こっているのか理解できませんでした。しかし、夢ではないことだけはわかりました。

音の出る方を見たら、台所の下のパイプあたりから、大量の水漏れが発生していました。というか横向きの噴水です! ここはホテル式サービスアパートメントなので、蛇口のそばまでお湯と水のパイプが別々に配管されており、そのうちお湯のパイプが破れて途中から激しく噴き出していました。

アメリカ映画で車が歩道に乗り上げて消火栓を壊し、水が吹き上げている、まさにあのシーンを目の前で再現しているかのようでした。
すぐにフロントに電話したものの、深夜というか明け方近くだったので、なかなか来てくれません。その間にもどんどん池は深くなっていきます。

20分程経った頃に、ようやく保安のおっちゃんと技術担当の人間が来ました。取り敢えず、外にある元栓を締めてもらいました。

流しの下に置いてあった、米や小麦粉類、牛乳、インスタントラーメンなどは全滅です。


床に置いてあった靴類も、船のように漂って、特に革靴は完全にダメになってしまいました。

一番影響の大きかったのが、ホットカーペットです。
かなりの部分が濡れてしまいました。

頭が混乱して、夢であってくれと願いながらも、完全に現実でした。

その後、次々にいろんな人がやってきました。
このサービスアパートメントは、ビルのオーナーである会社に管理を任せているので、そちら側の管理人も来ました。

さらに、下の階に住んでいる男二人もやってきました。下の階にもかなり水漏れしたらしく、けっこう怒っていました。下の階は、サービスアパートメントではなく、個人オーナーのようです。

それやこれやで朝まで眠れませんでした。

今日は、あさイチに会議なんですが・・・

 

後日、漏水の補償はしてくれました。
ホットカーペットは新品交換
靴は1600元
その他細かいものは合計200元
お湯代が100元でした。

なんか、ぜんぜん損した気分です。

 

中国で漏水はよくあることです。やはり施工や材料の品質の差だと思います。

実は、こんなのは序の口です。

過去には、もっとひどい目にあったことがあります。それはまた別記事で・・・

日本は生活も安定していて、穏やかに毎日を過ごすことができますが、中国に住むと、たいていの出来事には驚かなくなった自分がいることに気づかされます。

中国人のみなさんも、日々、いろんな出来事に耐え、たくましく生きているんだなぁと感心してしまいます。

カナダからの手紙(ラブレターフロムカナダ?)

覚えている人は少ないかもしれません。

2022年北京オリンピックが開催される直前に、ちょっとした騒ぎが起きました。

それまで、ゼロコロナ対策でうまくいっていた中国の感染対策が、オミクロン株の出現により、状況が悪化しつつあった時期です。

そして北京オリンピックを控えた1月中旬、ついに北京市内でオミクロン株の感染者が発見されました。

感染者は中国の大手銀行勤務の女子行員でした。年末年始休暇を利用して、友達といろいろなところに行って遊びまわった後、銀行に出勤しました。しばらくして発熱し、検査したところ、オミクロン株に感染していたことがわかりました。

オリンピック前だったので、けっこう中国内でも大きく報道されました。この感染ルートは、女子行員が銀行で、外国からの郵便物を触れたことによるものだと報道されました。

北京疾病予防センター主任(中国で「主任」はけっこう偉い)が、TVで真面目な顔で、海外からの郵便物に付着したコロナウイルスが原因であると言っていました。

それに対して、銀行側は当局と協力し、全面的に調査を開始し、該当する郵便物を特定しました。

1月7日にカナダから発送され、アメリカと香港を経由して、1月11日に届いたものです。

私は、このニュースを見た時、思わずクスッと笑ってしまいました。

理由は二つあります。

ひとつは、これって、「カナダからの手紙・・・!」

1978年1月10日にビクターから発売された、ラブレターフロムカナダ~という歌詞から始まる平尾昌晃・畑中葉子によるデュエット・シングル「カナダからの手紙」という曲を思い出したのです

古い人しかわかりませんよね、この曲・・・

まあ、それはいいとして、本当におかしいと思ったのは、それ以前に、コロナウイルスは物の表面を触って感染するリスクは非常に低いという情報を知っていたからです。

具体的な数字は覚えていませんでしたが、その当時のニュースを調べると、感染力は0.05%以下ということでした。

 

さらに、印刷物では3時間で感染力がなくなることも分かっています。

それなのに例の郵便物は、カナダからアメリカや香港を経由して北京の銀行に届けられ、付着していたコロナウイルスがそれに触った女性を感染させるとは・・・?

最初は、信じられませんでしたが、中国の事情を考えると容易に理解できます。

この女性は休暇を利用して、いろいろな場所を移動していました。おそらくそのどこかで感染した可能性が高いと考えられます。しかしそうなると、感染源が中国国内にあるということになり、ゼロコロナで完全コントロールしていた前提が崩れてしまいます。一番都合のいい言い訳は、「女性に感染させたのは、外国からの原因だ」とすることです。これまでも感染があるたびに、外国から持ち込まれたということを原因に挙げていました。「外国はとても危ないが、中国国内はゼロコロナ政策ですばらしい状況を維持している」という政府のトークを堅持しなけらばならないのです。

中国政府もたいへんです・・・

子供じみた言い訳なのですが、これがまかり通るのが中国でもあります。

多くの人は、そんなの信じられない!と、すぐにばれるのになぁ~と思っていたのですが、実はそうでもないのです。

私の知人たち(中国人)の多くが、海外から送られてきた郵便物や貨物に触れたがらないのです。彼らは消毒作業をしないと絶対に触りません。理由を聞いたら、「海外はコロナウイルスが蔓延しているから、自分たちを守るためにこうしているんだ」と言っていました。

まさに政府のトークをそのまま暗唱しているようでした。

ある程度有名な大学を卒業して、外資系企業に就職して数年間社会人として働いている人がです。しかも日本語1級も持っているので、VPNを使えば、海外の情報を入手、理解できるはずの人なのに・・・

唖然とするとともに、がっかりしました。

そういえばコロナが流行り始めた頃、日本が中国にマスクを寄付して話題になったことがありました。そのときにも、日本から送られてきたマスクの箱を消毒している中国人の姿を見たことがあります。

当時は、武漢を中心に中国の方がよっぽど蔓延していた時期だったのですが。

それ以来、輸入された荷物を消毒している行為を止めることはできません。言っても無駄だからです。

その光景を見るたびに、同僚の日本人と、また「カナダからの手紙」してるねぇと、小声で話すことくらいしかできません。

 

運転中に弁当を食べるバスの運転手

中国でバスに乗っていて、驚くことはたくさんあります。

その中で、びっくりしながらも、その器用さに恐れ入ったお話です。

 

中国人にとって、食事は本当に大事なものです。日本人とは比べ物になりません。日本人は、仕事が忙しかったり、何か用事があると、食事時間をずらしたり、時には食事を抜いたりしますが、中国ではそれは許されないことだと思った方がいいのです。

例えば、午前中の会議が長引いて、お昼休みにずれ込んでしまいそうになったとき、中国に慣れてない日本人は、ついつい少しくらいお昼が遅くなってもかまわない・・・それより会議を進めよう、と思ってしまいます。

上司の日本人がコントロールしている会議で、そういう状況での部下の中国人たちは、表立って文句は言いません。しかし、心の中では、「この日本人嫌な奴だな~、そんなに仕事が大事なのか?、早く会議を終わらせて食事させてくれ!」なんて思っているのです。

日本人の皆さん、気を付けましょう。

 

そんなに大事な食事ですから、忙しい路線バスの運転手さんたちも、うまくシフトの合間を縫って、食事をするわけですが、渋滞があったり、どうしてもシフトがうまくいかない場合があります。

 

そんなこともあるので、通常バスの運転手さんは、弁当持参で乗車勤務します。いつでも好きな時に、大事な食事ができるようにです。

もちろん、お客さんを乗せている通常勤務中にです。

お腹がすいたら、信号待ちや渋滞のタイミングを見計らって、さくっと一口ずつ弁当を口に放り込みます。片手で食べられるサンドイッチや肉まんなどはいい方で、多くの運転手は、ちゃんとお箸を使って、両手で食べます。

そして、私が恐れ入ったのは、バスが走っている間にも食べる運転手がいたのです。その人は弁当をハンドルの上にのせて、左手でハンドルを持ち、右手で箸を持って、ちゃんと運転していました。

さすがに、これにはビビりました。

そんなアクロバット的な器用な運転手に対して、乗客は全く気にする気配がありません。

運転手がお腹が空いて弁当を食べたいのなら食べればいい!

そんな寛大な心を持った人たちが、中国人なのです。