中国あるある

中国での20年間は、驚きの毎日でした

カナダからの手紙(ラブレターフロムカナダ?)

覚えている人は少ないかもしれません。

2022年北京オリンピックが開催される直前に、ちょっとした騒ぎが起きました。

それまで、ゼロコロナ対策でうまくいっていた中国の感染対策が、オミクロン株の出現により、状況が悪化しつつあった時期です。

そして北京オリンピックを控えた1月中旬、ついに北京市内でオミクロン株の感染者が発見されました。

感染者は中国の大手銀行勤務の女子行員でした。年末年始休暇を利用して、友達といろいろなところに行って遊びまわった後、銀行に出勤しました。しばらくして発熱し、検査したところ、オミクロン株に感染していたことがわかりました。

オリンピック前だったので、けっこう中国内でも大きく報道されました。この感染ルートは、女子行員が銀行で、外国からの郵便物を触れたことによるものだと報道されました。

北京疾病予防センター主任(中国で「主任」はけっこう偉い)が、TVで真面目な顔で、海外からの郵便物に付着したコロナウイルスが原因であると言っていました。

それに対して、銀行側は当局と協力し、全面的に調査を開始し、該当する郵便物を特定しました。

1月7日にカナダから発送され、アメリカと香港を経由して、1月11日に届いたものです。

私は、このニュースを見た時、思わずクスッと笑ってしまいました。

理由は二つあります。

ひとつは、これって、「カナダからの手紙・・・!」

1978年1月10日にビクターから発売された、ラブレターフロムカナダ~という歌詞から始まる平尾昌晃・畑中葉子によるデュエット・シングル「カナダからの手紙」という曲を思い出したのです

古い人しかわかりませんよね、この曲・・・

まあ、それはいいとして、本当におかしいと思ったのは、それ以前に、コロナウイルスは物の表面を触って感染するリスクは非常に低いという情報を知っていたからです。

具体的な数字は覚えていませんでしたが、その当時のニュースを調べると、感染力は0.05%以下ということでした。

 

さらに、印刷物では3時間で感染力がなくなることも分かっています。

それなのに例の郵便物は、カナダからアメリカや香港を経由して北京の銀行に届けられ、付着していたコロナウイルスがそれに触った女性を感染させるとは・・・?

最初は、信じられませんでしたが、中国の事情を考えると容易に理解できます。

この女性は休暇を利用して、いろいろな場所を移動していました。おそらくそのどこかで感染した可能性が高いと考えられます。しかしそうなると、感染源が中国国内にあるということになり、ゼロコロナで完全コントロールしていた前提が崩れてしまいます。一番都合のいい言い訳は、「女性に感染させたのは、外国からの原因だ」とすることです。これまでも感染があるたびに、外国から持ち込まれたということを原因に挙げていました。「外国はとても危ないが、中国国内はゼロコロナ政策ですばらしい状況を維持している」という政府のトークを堅持しなけらばならないのです。

中国政府もたいへんです・・・

子供じみた言い訳なのですが、これがまかり通るのが中国でもあります。

多くの人は、そんなの信じられない!と、すぐにばれるのになぁ~と思っていたのですが、実はそうでもないのです。

私の知人たち(中国人)の多くが、海外から送られてきた郵便物や貨物に触れたがらないのです。彼らは消毒作業をしないと絶対に触りません。理由を聞いたら、「海外はコロナウイルスが蔓延しているから、自分たちを守るためにこうしているんだ」と言っていました。

まさに政府のトークをそのまま暗唱しているようでした。

ある程度有名な大学を卒業して、外資系企業に就職して数年間社会人として働いている人がです。しかも日本語1級も持っているので、VPNを使えば、海外の情報を入手、理解できるはずの人なのに・・・

唖然とするとともに、がっかりしました。

そういえばコロナが流行り始めた頃、日本が中国にマスクを寄付して話題になったことがありました。そのときにも、日本から送られてきたマスクの箱を消毒している中国人の姿を見たことがあります。

当時は、武漢を中心に中国の方がよっぽど蔓延していた時期だったのですが。

それ以来、輸入された荷物を消毒している行為を止めることはできません。言っても無駄だからです。

その光景を見るたびに、同僚の日本人と、また「カナダからの手紙」してるねぇと、小声で話すことくらいしかできません。